『また会う日を楽しみに』 作:癸 洲亜
私にとって、外出が嫌になる時期
私にとって、変わり始める景色を楽しめる時期
日中に見上げると、視界によく広がるようになったその青に
夜に見上げると、澄み始めたその紺に
よく路傍を埋めつくしていた、姿が小さくなり始めたその白に
久しく聴いていなかったその傘の歌声に
ようやく丸みを帯び始めたその風に
よく見かけるようになった、淀みの無いその雲に
町に色が戻り始めたと思えるようになった最近に
足音を近づけつつある春を感じた
暗く沈んだ心の中に、鮮やかな黄色が描き足された気分だった
手に取った一本のネリネの造花
暖かな陽光があたっているそれが
『春になれば――』
そんななんの根拠も無い、私の心に描き足された黄色と
どこか似ている気がした
緩む口元にネリネを寄せ
目を閉じた
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