さよなら、メリークリスマス  作:詩人

空が、漆黒に染まった。

街は、いっそう輝きを増した。

僕は、白いため息をついて、黒い空を見上げる。

座ったベンチの隣は、もう誰もいない。

側に積もっていた雪を、そっとなでた。



あの日も、同じように晴れていた。

君は、僕に雪をぶつけて、無邪気に笑っていた。

あの街を二人で歩いて、いろいろ笑いながら話してた。

その弾けるような笑顔を見て、僕も笑みがこぼれていた。

君は、毎年、この日を楽しみにしていたね。

子供の頃に戻ったみたい、そう言っていたね。

僕は、仕事が終わると、早足で家へ向かっていた。

君は、冷え切った僕を、暖かく迎えてくれた。

君が欲しがっていたプレゼントを見て、とても喜んでくれていた。

その笑顔を見るだけで、僕はとても幸せだった。



・・・なんで、こうなってしまったんだろう。

君は、涙をこぼしていた。

今年のクリスマスも、一緒に居よう。

そう、約束していたはずなのに。

いつまでも、この手を繋いでいよう。

そう、約束していたはずなのに。

僕が、君に、確かにそう誓ったはずなのに。

こんなに君が近くに居るのに、こんなにも遠い存在になっていた。

・・・ゴメン、僕、約束、守れなかった・・・。



立ち上がった僕の側を、誰かが走っていった。

大きな荷物を抱えながらも、懸命に走っていった。

僕は、俯いて、それに背を向けて、歩き出した。



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