Doors of Destiny ~運命の扉~ [5] 作:因幡ノ白兎
出発の朝。今から秘宝に宿った悪しき魂を退治しに行くところだった。
「では、救世主様。宜しくお願いしますぞ。」
「はい。必ず悪しき魂を退治してきます。」
村長に別れを告げて、出発する。
「んじゃ、タクミ。使い魔について詳しく説明するよ。」
「おう、頼む。」
「使い魔の能力には2種類ある。1つ目は、私やタクミが使っている能力。私達は《ユニゾン》って呼んでる。《ユニゾン》は使い魔が自分の武器になる。2つ目はあまりないけど、自分に使い魔の力が宿る。《クロスユニゾン》って言われてる。実際、私も見たことないから分からないけど、凄い力を得られるらしいよ。」
「へー。.........で、1つ聞いていいか?」
「ん?何?」
「なんで背中合わせで話しているんだ?」
「そ、それは..........」
「それは?」
「な、なんでもない!」
「?」
「(トライワイトであった事を思い出すと、タクミの顔がまともに見れない......。やっぱり私、タクミの事、好き、なのかな.....。)」
「レム?大丈夫か?顔、赤いぞ?」
「ふえぇ!?だだだだだ、大丈夫!そ、それより、タクミ。少し聞きたいんだけど、か、勘違いしないでね!これは、確認なんだから!」
「あ、あぁ。で、聞きたい事って?」
「え.......っと、あ、あのさ、タクミって.......好きな子、いるのかなって........思って........。い、いる........?」
「え、あ、うん。ま、まぁ、いる......よ。」
「.......え。い、いるんだ.....。そう.......なんだ......あはは、ごめんね、変な事聞いて。」
少しの間沈黙が続いた。その時、匠の使い魔、ドラコが出現する。
「うおっ!!!ド、ドラコ!なんでお前が勝手に出現してんだ!?」
「あ、言い忘れてた。使い魔は主の指示以外でも能力を使えるの。ただし、《ユニゾン》は主がいなきゃいけないんだ。」
<そういう事だ。それより、見ろ。あれが紅の秘宝がある、竜の巣だ。>
目の前に洞窟が見える。
「あ、あれが、竜の巣.....。」
「今日はここで休んで、明日中に入りましょう。」
「そうだな。暗くなってきたし、明日にしよう。」
匠達一向は、竜の巣に入る前に夜明けを待つ事にした。その夜の事......。
<主タクミ、少しいいか?>
「ん?なんだ、ドラコ?」
<主タクミに、ある魔法を使えるようになってもらいたい。今日中に、だ。>
「今日中?朝までにって事か?でも、なんで.....?」
<理由は........今は言えない。だが、どうしても使えるようになって欲しいのだ。>
「........分かった。でも、いつか話してくれよ?」
<無論だ。>
そして、ある魔法を使えるようになるべく、秘密の特訓が始まった。
「はぁ...........はぁ............はぁ...........で、出来た........。」
<完璧だ。流石だ、主タクミ。>
「朝になっちまったけどな。」
<いいや、この短時間でここまで出来るとは思わなかった。さぁ、竜の巣に行こう。>
「そうだな。レム達もそろそろ起きるだろうし。」
それから1時間が経ち、レムが目を覚ます。食事をして竜の巣に向かう準備をした。
「さぁ、行くわよ。」
「どんな奴が待ってるか楽しみだ。」
<...........。>
「ん?どうしたの、九尾?」
<大丈夫です。ただ......。>
「ただ?」
<タクミに、ここの竜を倒す事が出来るかどうか......。>
「え?それってどういう.......」
「大丈夫だって!俺にはドラコがいる。俺達の力があればどうって事ないさ。な?ドラコ!」
<......はい。>
竜の巣の奥に進むとそこは大きな広間になっていた。
「す、凄い......。こんな所があるなんて......。」
「すげぇ!!広いなここ!ドラコ、敵の竜は?」
<.....こっちです。それと、レム様達は後ろに下がっていて下さい。>
「ど、どうして?私達も一緒に......」
<主、ドラコの言う通りにしましょう。>
「で、でも......。」
「レム、俺なら大丈夫だ。後ろで見ててくれ。」
「........分かった。危なくなったら援護するから。」
そう言ってレム達は後ろに下がる。すると、九尾が能力を使い白銀の狐に変化する。
「.......き、九尾?」
<.......申し訳ありません、我が主。>
そう言うと、匠とドラコがいる広間の入り口を炎の壁で閉ざしてしまう。
「「!!」」
匠もレムも驚きの顔を隠せない。
「これは、どういう事、九尾.....。」
<これは、タクミとドラコの問題。私達が手を出していいものではありません。>
「もしタクミとドラコが死んでしまったらどうするの!!!」
<いいえ、どちらかは生き残ります。>
「どういう......事.....?」
<我が主、それは自分の目でお確かめ下さい。>
「..........。」
ドラコが匠に小さな声で言った。
<主タクミ、敵ならもう着ております。>
「な......に......?ど、どういう事だ!」
<世界を救う為の3つの秘宝の1つ、紅の秘宝を持つのは、この私、主タクミの使い魔、ドラコなのです。>
その事を聞いたレムは驚いてしまっている。
「な、なんですって!?」
<そう。紅の秘宝、通称力の心臓を持つ竜、それがドラコだったんです。そして奴は、その事に気づいていた。>
「気づいて......いた...?」
<はい。そして、この炎の壁を作るように頼んできたのもドラコ自身です。>
「そ、そんな.......。」
<主タクミ、貴方に頼みがあります。>
「え?」
<主タクミの手で、私を倒して欲しいのです。>
匠は、あまりの衝撃に固まって動けなくなってしまった.......。
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