渇望  作:癸 洲亜

 羨ましい
 周りのすべてが羨ましい


 運動できるその体が、
 博識で学力のあるその頭が、
 周りから好かれるその性格が、
 人の目をひきつけられるその美貌が、


 幾度も与えられている、変わることのないその愛情が、
 
 その愛情を与え交わすことのできるその関係が、


 周りは個々で異なっていても、
 その個々すべて、私が羨み欲するものを手に入れている。


 私がどんなに嘆き、努力し、手を伸ばしても、
 それらを手に入れることはおろか、
 それらに指先がかすることすら叶わない。


 それでも、私は思う。

 ああ欲しい
 ……ほしい
 ……ホシイ


 ああ一体どうしたら、この滲み歪む視界を無くせられるのか。
 
 どうしたら、この空虚な心を埋められるのか。



 ああ一体どうすれば、この渇望を癒すことができるの?



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