Doors of Destiny ~運命の扉~ [4]  作:因幡ノ白兎

「実はね、私、天孤の土地神の子なの。」
「土地神......って事は、神様の子って事?」
「そう。私達みたいな種族を獣人族っていうんだけどね、獣人族って寿命が長いの。特に、私のような特別な狐は、短くて300年、長くて400年は生きると言われているの。200年くらい前の話.....。私の村、この、トライワイトが何者かに襲われた。私は運良く逃げれた。でも、私以外は皆捕まっちゃたわ。つまり、私は天孤の最後の生き残り。だからさっきの男、ジークは、私の事を古の狐と呼んだのよ。そして私は、九尾の主になったって訳。」
「そうだったのか.....。この国でも、争いは起きるんだな。」
と言うと、レムは小さく、
「........なんで、起きるんだろうね。」と言う。
「え?」
「なんで、国を取り合ったり、争わなきゃいけないの?争わなくてもいいのに、仲良くすればいいのに、なんで争わなきゃいけないの?私はもう、この世界が、嫌.....。争いは争いしか生まない、なぜわからないの?私達生き物の手は、誰かを傷つける為にあるんじゃない!!人を、国を、世界を救う為にあるのよ!!」
レムが泣いている。自分の力の無さが、土地神としての誇りの無さが、悔しいのだ。
「.........レム.....お前....。」
レムは涙を拭い、無理矢理笑顔を作った。
「ゴメン。タクミには関係ない事だね。やっぱ私はダメだ。この話をする時、絶対に泣かないって決めてたのに、それも破っちゃった。私、ちょっと外の空気吸ってくる。」
レムが立ち上がろうとする。が、レムの手を匠がつかむ。離れないように強く。
「ちょ、ちょっとタクミ。止め......」
そこで言葉が止まる。匠はレムの小さな体を抱き締める。
「泣けよ。我慢、すんなよ。辛い事があったら泣け。泣いて、泣いて泣いて泣いて泣いて泣き疲れるまで存分に泣け。それを乗り越えて、再び立ち上がった時、お前はもっと強くなる。だから、今は泣け。」
レムが震えている。レムの瞳に涙が溢れる。
「うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!タ......クミ、タクミ、タクミタクミタクミタクミ!!」
「あぁ。俺が側にいてやる。」



「どうだ?泣き止んだか?」
「うん.....。ありがと。私、あの時、胸がキュンってなっちゃった♪」
「え.....あ、あぁ。い、いや、当然の事をしたまでだ.....。」
「あ〜、もしかして、照れてるの?」
「えーいうるさい!!さっさと帰るぞ!」
タクミが歩き出す。
「ありがとう.....。タクミ......。」と、匠に聞こえないように言う。
トライワイトから村に帰り、村長に報告する。
「村長さん、使い魔を呼び覚まして来ました。」
「おー!流石救世主様!頼りになります。では、3つの秘宝の事についてお話しします。3つの秘宝、それぞれ名があり、力の秘宝、知恵の秘宝、勇気の秘宝があります。力の秘宝の別名は紅の心臓、知恵の秘宝の別名は蒼の心臓、勇気の秘宝の別名は翠の心臓。これらの悪しき魂を倒して頂きます。」
「分かりました。明日出かけます。案内していただけますか?」
「はい、分かりました。では、明日に備えて、今日はもうお休み下さい。」


<こんな所にいたのか、赤き竜よ。>
村長の家の屋根の上で九尾がドラコに話しかける。
<九尾、で良かったかな。>
<良かったのか?タクミを主と認めて。なぜならお前は......>
<それ以上言わないでくれ。分かっている。その時が来るまで俺はタクミと共にいる。それが、俺の願いでもあるからな。>
<そうか。それがお前の願いなら止めはしない。だが、もしもの時はどうする?>
<その時は、九尾、お前がその時の俺を殺してくれ。>
<..........分かった....。>
屋根の上で2匹の使い魔が誓いをたてる。それを見守っているのは、夜の闇に浮かぶ月だけだった......。






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