Doors of Destiny ~運命の扉~ [3]  作:因幡ノ白兎

「タクミー!!!起きて!起きてタクミ!使い魔呼び覚ますんでしょ!」
目を覚ますと、目の前にレムがいた。
「んぁ〜。おはよう、レム。」
「おはよう.....じゃない!!さ!早く行くよ。」
「行くってどこへ?」
「一番落ち着いて修行が出来る場所、私の生まれた場所、『トライワイト』へ!」

「さ、行くよ、タクミ。」
「行くって、この井戸の中にか?」
レムは村にある井戸がトライワイトという所へ入り口だと言う。だが、どうやら、ここへの立ち入りは基本的に禁止されているらしい。今回は、匠の中に眠る使い魔を呼び覚ます必要があるから特例らしい。
「そうだよ。トライワイトへはここからしか行けないんだもん、仕方ないじゃない。」
トライワイト.....。黄昏時という意味だと思う。つまり、その世界は、いつも夕方って事なのだろうか。
「んじゃ、仕方ないな。行くとしますか。」
俺とレムは井戸に飛び込む。

「やっぱ、予想通りの風景だったわー。」
まさに予想敵中。その風景は、まさに黄昏時だった。
「さ、遊んでる時間なんてないよ。早く始めるよ。」
そして、俺の中に眠る使い魔を呼び覚ます修行が始まった。
やり方はとても単純だった。レムが攻撃をする。それを避ける。ただそれだけ。だが、とても過酷な修行だった。普通の人間にして見れば、間違えれば死に至る。そして、この世界で死んだら......。
死ぬ訳にはいかない。必死に攻撃を避ける。もしあったってしまったら、あの男達のようになってしまう。だが、
「ぐあっ!!」
当たってしまった。体が燃え出す。自分の命が少しずつ削られているのが分かった。
「タクミ、降参しなさい。早くしないと死んじゃうわよ?」
「降参なんかしない!さぁ、来い!!この状態でも避けてやる!」
「........分かった...。」

それから、何分たったんだろう....。流石に体が動かなくなってしまった。
ドサッ.....
「!! タクミ!!」
九尾の能力を解く。火は消えたが、全身火傷を負っていた。もう少し無理をしていたら、死んでいただろう。
レムはリフラルという回復魔法で匠の傷を癒す。
「ねぇ、タクミ。どうしてあんな無茶したの?確かに時間は無いけど、今日中に呼び覚まさなくても.......」
「ダメだ。無茶してもやらなきゃならない事があるんだ。」
「やらなきゃいけない事?」
「あぁ。運命を変える。俺の友達があんな事にならないように運命を変えたい。その為なら、なんだってするさ。あいつには俺が必要なはずだ。そして、俺にもあいつが必要だ。だから無茶をする。それが友達ってもんだからだ。」
<............。>
九尾は黙って聞いていた。その時、
「こんな所にいたのか。探すのに苦労したぜ。」
男の声がした。レムが振り替える。
「ーーー!!!! 貴方は........ジーク....。」
レムの顔が凍りつく。怯えているんだ。
「ほう。よく俺の名前を覚えていたな、狐。いや、古の狐と呼んだほうがいいか?」
「.........。どうやら、知りすぎたようね。なら仕方ない、貴方をここで始末するわ。」
「ならやってもらおうか?」
「えぇ。今すぐに!! 行くよ、九尾。」
<はい、我が主。>
「狐の能力なんて使わせねぇ。」
ジークはそう言い、詠唱を始める。
「強大な魔力を封じる魔法、ペポーパ!」
すると、レムと九尾の足下に魔法陣が現れる。魔法が発動すると同時に、レムの魔法陣が粉々に砕ける。
「え?な、なに?なんで、魔法陣が崩壊したの?」
「ペポーパは魔法だけじゃなく、魔法陣を使う技全てを封じる魔法。つまり、能力は発動できないって事だ。」
「くっ!!」
「さて、そろそろ殺すか.....。」
すると、ジークの魔法陣からハイエナの使い魔が出現する。
「闇とかし、迷う者を喰らえ!」
闇がジークを包む。ジークの姿が再び見えた時、
「闇式攻撃器具、ダークウェポン」
<主の命は私が守.......>
そこで途切れる。九尾は空中に蹴り上げられていた。
「!! 九尾!!」
「死ね。」
九尾をつかみ、地面へと投げつける。
ドコーーーーーーン!!!!!
九尾は地面に投げつけられた。
「九尾ー!!!!! 貴様......許さ.......」
「うるせぇなぁ。さっさと死ねよ。」
首をつかまれる。レムは持ち上げられ、身動きが取れない。
「ぐ...........あ........」
レムは分かった。自分の意識が段々遠のいていくのも、自分がこのまま死ぬことも。が、
「離せよ、てめぇ。」
匠がジークにそう言った。
「あ?なんだお前は?」
「レムを離せって言ってんだよ。俺の大事な仲間だ。」
「ほう。ならば、お前から始末してやろう。」
そう言って、レムを離す。
「げほっ!げほっ!に、逃げて......タクミ! 」
「さぁ、死ね。」
手には鋼鉄のメリケンサックのような物をしている。これで殴ろうとする。こんなので殴られたら確実に死んでしまう。目を瞑る。死を覚悟した。
その時、
急に、その手が止められる。止めたのは.......、赤い竜だった。それほど大きくはない。自分の背と同じくらいだ。
「なんだてめぇは。」
その言葉を無視して、赤い竜は匠に言う。
<お前の勇気、見せてもらったよ。俺は、お前の使い魔だ。名は無い。お前が決めろ。>
「うーん、単純でいいんなら、ドラコってのは?」
<ドラコ......。それでいこう。それで、お前はどうしたい?この男を倒すのか?>
「あぁ。お前の.......ドラコの能力を貸してくれ。」
<いいだろう。お前に任せよう。>
そして、赤い竜、ドラコは能力を使う。匠にドラコの力が宿る。
レム同様、武器を持った匠が出てきた。持っているのは、片手棍だった。
「さて、やろうか.....。」
「来いよ。初めての奴がそんなのを使いこなせる訳......」
一瞬、一瞬だった。匠はジークの前に移動した。
「残念。消えろ!! 竜の力が爆発する。バーニングロッカー!」
閃光と共にジークは消滅する。


「ありがとう、タクミ。貴方がいなかったら今頃死んでいたわ。」
「いや、ドラコが俺を認めてくれたからさ。」
<それは違うぞタクミ。俺が認めたんじゃない。お前が認めさせたんだ。結果的に言えば、お前のお手柄だ。>
すると、黙っていた九尾が口を開く。
<私は君の事を甘く見すぎていたみたいだ。すまなかった。>
「あぁ。気にするな。俺だってレムが死んだらいやだしな。」
そんな事を言っていると、レムが急に、
「ねぇ、タクミ。あのさ......、気になった事ない?た、例えば、私がどうして、古の狐なんて呼ばれているかとか。」
「気になるけど、無理に話さなくても.....。」
「ううん、話す。どうせ、そのうち話さなきゃいけないから。」
「分かった。聞くから話して。」
これから、レムの過去が明かされる。




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