MHストーリー『異邦の冒険者』前編 作:因幡ノ白兎
私は普通の高校生......だった。
「おーい......。もしも〜し。おーい、起きろ〜っ。もう朝だぞ〜、寝坊だぞ〜。」
「.........うーん....???」
目をごしごし擦り、ベットから起き上がる頭がズキズキと痛む.....。なんか、ついさっきまでとてつもなく変な夢を見ていた気がする。
「.......あれ?」
いつもと違う。ここは私の部屋じゃない。それどころか自分の家ですらないぞ.....?
「あ、やっと起きてくれた。もう死んじゃったのかと思ったよ〜。」
目の前にいたのは......こなただった。だが、変な鎧を身にまとっていた。
「キミ、村の入り口で倒れたんだよ。よかった、目を覚ましてくれて。」
「........き、きみ.....?」
寝起きの頭をフル回転させる。とりあえず落ち着け、冷静になろう。
私は柊かがみ。そしてコイツは親友の泉こなた。少なくとも三人称で呼ばれる訳がない。
「外傷は特に見当たらなかったけど.....。雪山で遭難したのかな、もしかして。」
「......こなた、その変なコスプレはなんだ?」
「あれ、どうして私の名前を知ってるの?どこかで会ったことあったっけ?」
「............。」
何が何だか分からない。一体全体、どうなってるっていうんだ?
「あのさ.....、ここはどこなの?私、さっきまで自分の家にいたはずなんだけど.......。」
「............。」
こなた(らしき人物)は、返事をすることなく玄関に歩み寄り、ゆっくりと扉に手をかけた。
薄々、気づいてはいたんだ。たぶんここは関東でも日本でもない。それどころか地球上のどこにも存在しない場所。そう、この世界はきっと.....。
こなたが振り替える。ニヤリと口の端を吊り上げたかと思うと、勢いよく外界への扉を開け放った!
「ここは、フラヒヤ山脈の麓にある小さな集落、ポッケ村だよ。」
「な、なんだそりゃ.....!?そんな名前の山なんて聞いたことないぞ......?」
「そうなの?『辺境』、この大陸にある猷逸の雪山だから、有名だと思ってたんだけど。」
「.....どうして、鎧を着込んだ人ばかりいるの?こなた、あんたまで.....。」
「だって、私達は『ハンター』だから。」
-----そこは人とモンスターの共存する世界だった。神話でしかお目にかけない飛竜が空を舞っていた。創作小説でしかあり得ない巨大生物が生存していた。恐竜時代を連想させる過酷な大地。弱肉強食と、一切の容赦ない生存競争。そこで、人という生物は----、厳しくも日々の平穏を勝ち取っていたのだ。
「私はかがみよ。私のことを助けてくれたみたいね、どうもありがとう。」
「どうしたしまして。私はこなただよ、よろしくね〜。」
こいつ曰く------ 昨夜、私はポッケ村の入り口で気を失っていたところを発見されたらしい。大きな怪我もなく、簡単な手当てが終ったところで第一発見者であるこなたの家に運び込まれた。
「身体の具合はどう?どこか痛んだりしない?」
「う、うん。大丈夫よ.....。脳みそ以外は.....。」
-------あまりにも突然過ぎる出来事に頭が追いついていかない。とにかく、落ち着いて現在の状況を整理してみよう。
私は柊かがみ。どこにでもいるような18歳の女の子だ。この村に担ぎ込まれる前の記憶を探ってみると、10月29日にまで遡る。その日こなたは、一緒に勉強するという名目で私の家に遊びに来たんだった。2人だけの夕食をとった後、これから勉強を始めるというところで....、
「限定カラーのPSP買っちゃってさ、実はこれが2台目なんだよね。折角だしかがみも一緒にゲームしようよ〜。」とまあ、受験生という自覚の足りない発言が飛び出した訳だ。仕方ない、少しだけ付き合ってやろうと思って、しぶしぶながらPSPを受け取ったんだっけ。なんだか妙に眠たいなーとか思いつつ、寝っ転がってゴロゴロしながら-------、........あれ。それからどうしたかっけ?この辺から記憶が怪しいぞ。そこからどうやってこんな村で生き倒れるなんて展開に?そもそも、どうして私達が初対面になってるんだ。別人なのか?それともこなたの記憶喪失?大体どこにあるんだよポッケ村って。外の景色を見る限り、遠い異国にしか思えないし。なぜ?どうしてどうやって?こなたの仕込んだドッキリ? ...........。
「あぁ〜〜〜.......。なるほど、夢オチか......。」
かなり疲れてたし、居眠りの真っ最中なんだろう。
「ところでそれ、可愛い服だね。どこかの民族の服装なのかな?」
「いやこれ、ありきたりなセーラ服だけど。見たことないのかな、やっぱり。」
「きっと、遠くの異国から来た人なんだよね、きっと。」
「まぁ、この村の住人じゃないのは確かだけどね...。」
日本から来ました、とか言ったら通じるだろうか。
「どこから......か...。」
これはどう説明したものか.....。言葉が詰まってしまう。
「.......そっか。ワケありってことか。」
「...........え?」
「ごめんね、無理に聞き出すつもりはないよ。色々あったんだね、きっと。」
なんか、勝手に納得してくれたみたいだけど......。まぁ、いいか。
「えっと.....かがみでよかったっけ....。」
「なに、こなた。」
「村長が会いたがってたよ。動けるようになったら来てほしいって。集会所にいるから、顔出しに行ってあげてよ。」
「いいけど、どこにあるの?」
「案内してあげたいんだけど......事情があって。場所は教えるから1人で行ってきてくれる?」
「はぁ......。」
中身は別人みたいだけど、この世界にはこなたの姿がある。もしかして、他の知り合いにも出会えるんだろうか?
「折角なんだし、楽しんでみるか......。」
楽しむ......。初めはそう思えた。でも、この世界はそんな甘いものじゃないのをまだ知らなかった。
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