HEAVENS BREAK 作:雨月千夜
第87話「ポセイドン」
気がつけば、あたりの日は落ち、すでに夕暮れとなっていた。
すでに竜崎達は、私服に着替えて、帰る支度は万端整っていたのだが、海の家でカキ氷を食べて帰ることになった。
もっとも食べているのは、夕那、青葉、菊池、黄山、緑川の精神年齢幼い組である。
「早く食べろよー」
竜崎は溜息をつきながらそう呟く。
しかし、カキ氷は頭にキーンとくるので、一口食べては頭を押さえ、また食べて頭を押さえ、の繰り返しで一向に進まない。
その様子に竜崎は溜息をつく。
一方、村雨はそんな竜崎を見つめていた。どうやら彼の横に行きたいらしいのだが、どうやっても足を踏み出す勇気が無い。歩こうとすれば足が拒絶する。こっちも歩こうとしては踏みとどまり、また歩こうとして踏みとどまり、の繰り返しで進展しない。
村雨が心の葛藤を繰り広げていると、夕那達はカキ氷を食べ終わり、ようやく帰ることになった。
村雨ががっくりと肩を落としていると、
「まだサヨナラは早くないかイ?」
突然として、機械音のような声が飛んでくる。
すると海から巨大な球体の乗り物が飛び出る。その上から筒のような者が飛び出て、その上に白衣を着た男が立っている。
上も下も長袖、長ズボンなので、よく分からないが、顔の上半分をマスクで隠している。下のほうには複数の縫い目が見えるなんとも不気味な男だ。
「何だ、お前!」
竜崎は食いかかる。
しかし男は大して気にも留めず、
「おやおや、随分と不躾な子どもだネ。まずは、そっちから名乗るものじゃないかナ?」
「ふざけるな」
相手の言葉に反論したのは、竜崎ではなく村雨だ。
彼女は竜崎の横に立って腕を組み、
「貴様のような理解不能な生物に語る名など無い。今なら許してやる。名を名乗って帰れ」
こういうときに頼りに鳴る、という羨望の眼差しを竜崎は村雨に向ける。
村雨はどういう状況であれ、竜崎の横に立ててよかった、とぐっと拳を握る。
男は首をかしげて、
「ンン?君はもしや……やっぱリ!水の神の力の所有者じゃないカ!」
急に男のテンションが上がる。
「水の神の力に、それと同等の力を持つ水の能力者!いいよ、いいヨ!実ニ!今日はラッキーデーだねェ!」
「何を言って……」
「我等は『ポセイドン』」
村雨の言葉は男の言葉に遮られる。
「我等の希を叶えるには……村雨氷雨と菊池緋奈。いずれかが必要なのサ」
相手の言葉を理解する前に、相手の猛襲が来る。
「ま、詳しいことはあとで話そうカ!」
ドゥ!!と急に巨大な波が竜崎達を襲う。
高さは何メートルもあり、とてもかわせるようなものじゃない。
「逃げろ!!」
村雨はそう叫ぶが既に遅い。
その巨大な波は竜崎達を呑み込み、彼らを海へと誘っていく。
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